区長に“未来に渡せる区政”の進め方を提案しました
こんにちは。台東区議会議員の本目さよです。
物価高騰が続き、家計のやりくりが大変だと感じている方も多いと思います。
実は、行政も同じ課題を抱えています。区の支出の中で特に大きいのが「人件費」と「扶助費(福祉など人を支える費用)」です。これらは年々増えています。
さらに、国や都からの補助金が減っているうえに、「ふるさと納税」で区民税の一部が他の自治体に流出してしまう。いわば“お財布の中身が減り続ける”状況が続いています。
🧩限られた予算の中で、どう優先順位をつけるか
企画財政部長からは、
「経費全体の上昇が見込まれ、楽観できない」「既存事業の見直しや統合を進める」との答弁がありました。
特に印象的だったのは、「DX(デジタル化)による業務効率化を通じ、限られた人材を有効活用していく」という部分。
区の職員が同じ時間でより多くの区民を支援できるようにする、という発想です。
私たちの暮らしに置き換えるなら、「冷蔵庫の中の食材で、どうすれば家族みんなが満足できる夕飯をつくれるか」というようなこと。
“足りない”からこそ、知恵と工夫が問われるタイミングです。
🏦未来へのバトンを渡すために
また、扶助費の増加に対応するため、基金(貯金のようなもの)を一定額確保しつつ、必要に応じて取り崩していく方針も示されました。
これは、いざという時に生活を守るための「備え」を意味します。
子育てや介護、障がいのある方への支援など、“人を支える費用”は簡単に減らせません。
だからこそ、無駄を減らし、効率を上げることが欠かせません。
私は今後も、区民生活を守りながら、将来世代に「ちゃんと渡せる区政」であり続けるための議論を進めていきます。
✏️まとめ
今の安心と、未来の安心。どちらも守るために。
行政の工夫やデジタル化を進めつつ、区民の声がきちんと反映される予算づくりを求めていきます。
あなたは「区の支出で優先してほしいこと」を挙げるとしたら、何を思い浮かべますか?
ぜひ考えてみてください。
🗒️【質問全文(財政)】 ※当日言い回しなど異なっている場合があります
つなぐプロジェクトの本目さよです。
まず最初に、財政運営の今後について伺います。令和6年度決算を通じて改めて感じたのは、
台東区の財政が、これまでの“安定基調”から構造的な転換期に入っているということです。
物価や賃金の上昇は、一時的な負担増にとどまらず、
区のあらゆる経常経費――つまり日々の運営にかかる費用――を押し上げています。
いま起きているのは、単なる“物価高”ではありません。
行政運営そのもののコスト構造が変わってきている。
そうした、より深い変化が進んでいます。
扶助費の増加と運営コストの上昇
中でも、扶助費の増加は、区の財政に大きな影響を与えています
扶助費とは、保育・医療・障害福祉など、区民の生活を直接支えるための経費です。
こども関連分野では、子ども子育て支援新制度導入時より着実に進めてきた保育・学童・放課後支援などの施設整備が減少しつつある一方で、その整備された施設の分だけ、利用者も増加し、施設の管理コストも増加しています。加えて、物価や賃金の上昇により、光熱費、委託費、食材費などが上昇しています。更に、幼児教育・保育の無償化や医療費の無償化などの制度拡大により支出が増えています。こども関連分野のランニングコストも増え続けています。
一度上がった運営コストを下げることは非常に困難です。
障害福祉サービスでも、需要の増加と公定価格に対応するため補正予算が組まれていますが、こちらも同様に、運営コストは上昇しています。
さらに、人材確保は喫緊の課題です。
福祉の現場で働く方を確保するためには、住宅補助などの福利厚生支援も重要です。
これらは一時的ではなく、今後も継続的に発生するコストです。
とくに障害や介護の分野では、国の報酬改定だけではまかないきれない部分を、
自治体としてどう補っていくか。
この部分を放置すれば、現場の担い手が減り、福祉サービス自体が立ち行かなくなります。
扶助費の上昇は、止めることのできない経常的な支出です。
財政の柔軟性を示す「経常収支比率」が高くなり、行政のいわゆる経営状況が悪化する要因でもありますが、
基礎的自治体として安易に削るべき性質のものではありません。
むしろ、どうすれば持続可能な形で支え続けられるか。
そこが、今の区政に求められる視点です。。
見かけの余裕と実質的な財政力
ただ、決算上では、数字の上での基金残高や剰余金――いわば区の貯金のようなお金――が増えているようにも見えます。
審議の中では、
「基金残高は平成27年度末の394億円から、令和6年度末には597億円とおよそ1.5倍に増えている。
ただし、物価や人件費の上昇によって、実質的な価値は目減りしている」
という答弁がありました。
たとえば、公園トイレの改築を例にとると、平成26年度と比べて令和6年度の1平方メートルあたりの工事費は約2.6倍に。
東京都が定める公共工事設計労務単価――これは現場で働く方の標準的な賃金のことですが――これも、
今年2月に全職種平均でおよそ6%引き上げられています。
つまり、数字上ではお金が増えていても、実際には物価の上昇で“お金の力”が弱まっている。
家計でいえば、同じ貯金額でも、買えるものが減っているような状態です。
今回の定例会では、区独自の物価高対策としてお米券の配布が提案されました。
短期的には区民の生活を支える効果が期待できますが、
一般財源――つまり区が自由に使えるお金――を使う補正予算によって、
「財政に余裕がある」と受け取られた面もあります。
しかし実際には、扶助費などの経常経費が増え続け、
区の“基礎体力”である財政の余力は確実に削られています。
これからは、短期的な支援と中長期の安定運営。
このふたつをどう両立させるかが問われています。
将来の見通しと外部要因
審議の中では、令和8年度から12年度の5年間でおよそ729億円の財源不足が見込まれるとの答弁もありました。
(仮称)北上野二丁目福祉施設や清川清掃車庫など、大規模整備が集中する時期です。このあとにも、清川二丁目用地の地域交流機能を有する新たな公共施設や凌雲橋、本庁舎の整備、さらには暑さなどの気候変動に対応するための施設整備など、
この先にも多くのコストが見込まれます。
また、東京都の保育料無償化や高校生医療費の無償化など、区民にとっては嬉しい制度も、
国や東京都の補助率が下がれば区の一般財源への負担が拡大します。
ふるさと納税による区税流出は、令和6年度でおよそ19億円。
国による税源の再配分の見直しがさらに進めば、安定した歳入の確保はますます難しくなります。
今後の方向性と判断軸
こうした現状を踏まえると、これからの区政には、
「何を守り、どこに重点を置くのか」という明確な判断軸が必要です。
こども、高齢者、障害者など、支援が不可欠な分野は扶助費の増加を前提に、
しっかりと支える仕組みを整える。
一方で、目的が薄れた事業や、やること自体が目的になっている事業は、見直していく。
その積み重ねこそが、区政の持続可能性を支える基盤になると考えます。
質問
令和8年度の予算編成にあたり、
こうした経費増と外部環境の変化を前提に、区長としてどのような姿勢で臨まれるのか。
特に、扶助費が増え続ける現実の中で、区民の生活を守りながら、
将来世代に持続可能な財政を引き継ぐため、どのように舵を取っていくのか。
区長の見解を伺います。
🗣️【答弁全文(企画財政部長)】
区財政は、現時点では必要な財政の対応力を維持していますが、物価や賃金の上昇が今後も経費全体を押し上げていくと見込んでおり、楽観視できる状況にはありません。
また委員ご指摘のとおり、不合理な税制改正による影響は拡大しており、歳入の先行きは依然として不透明です。
このような状況を踏まえ、令和8年度予算編成にあたっても、既存事業の見直しや類似事業との統合などにより、財政の柔軟性確保に努めることが重要だと考えています。
加えて、DXによる業務効率化を通じ、限られた人材を有効に活用することで、子育て支援や高齢者・障害者へのサービスの充実など、行政需要に適切に対応して参ります。
また、今後の景気変動に伴う大幅な歳入の減や、扶助費の増などに対応していくため、一定の基金残高を確保するなど、基金や起債を有効に活用することで、財政基盤を維持していきます。
引き続き、中長期的な視点を持ち、持続可能な財政運営に努めて参ります。