「困っているなら、まずは声を上げてほしい」――2人の子どもを育てながらパートナーを病気で亡くしたAさん(40代女性)に、当時の経験と行政の支援についてお話を伺いました。同じような状況にある方、またはそうした方の近くにいる方に届くことを願い、個人が特定されない形でご紹介します。

 


突然の発覚から、わずか3か月

パートナーの病気がわかった当時、お子さんは中学生と小学生の高学年でした。入院と退院を繰り返し、最終的に「もう家に帰りたい」という本人の希望で退院。自宅に戻ってからわずか2週間足らずで亡くなりました。発覚から約3か月のことでした。

Aさん自身も体調を崩しており、病気休職の状態。毎日のお見舞いと子どもたちの生活を回すだけで精一杯の日々だったといいます。

退院時に知った「介護保険」と「訪問診療」

病院の「がんサポートセンター」から、介護保険の申請を勧められました。電動ベッドなどの補助が出る可能性があったためです。しかし、認定が下りたのは亡くなった後。結果的に間に合いませんでした。

一方、退院と同時に訪問診療に切り替え、近所のクリニックを紹介してもらいました。医療費には上限があり、想像していたほど高額にはならなかったそうです。

知っておきたいポイント: 40歳以上であれば介護保険が利用でき、在宅での看取りに必要な支援を受けやすくなります。退院が決まったら早めに地域包括支援センターに相談しましょう。

葬儀のあと、1か月で気力が尽きた

亡くなったのは連休中。葬儀はパートナーの職場の協力もあり、スムーズに終えることができました。

直後は「これから頑張ろう」と気持ちが高ぶっていたAさん。しかし、約1か月後、急に体が動かなくなってしまいます。

「シューっとしぼんでしまった感じ。子どもたちにご飯を作ることもできなくなって、セブンイレブンのハンバーグを温めて出すのがやっとでした」

子ども家庭支援センターへの電話が転機に

子どものご飯が作れない。でもどこに頼ればいいかわからない――。そのとき、Aさんが思い出したのが子ども家庭支援センターでした。お子さんが小さいころに利用したことがあり、存在を知っていたのです。

電話をすると、長い時間話を聞いてくれ、後日自宅に来て面談もしてくれました。ひとり親向けの家事支援サービスの紹介、業者への連絡の代行まで、担当のワーカーさんが一緒に動いてくれたといいます。

「外部への連絡すらできなくなっていた私に代わって、業者に電話して空きを調べてくれたんです」

最初はひとり親支援の家事ヘルプを利用し、その後、Aさん自身の体調面を理由としたヘルパー派遣に切り替え。週に数回、夕飯を作りに来てもらう支援を受けました。

「セルフネグレクトです」――保健師の一言が背中を押した

Aさんは当初、支援を受けることに抵抗がありました。「やっぱりいいです」と断りかけたことも。しかし、保健サービス課の保健師さんからこう言われます。

「今のあなたの状態は"セルフネグレクト"です。自分で自分のケアが全くできていない状態です」

この言葉がショックであると同時に、支援を受け入れる転機になりました。

子どもたちへのケア

子ども家庭支援センターのワーカーさんと保健師さんは、Aさんだけでなくお子さんたちにも個別に話を聞いてくれました。夏休みや冬休みなど長期休暇中を中心に、月1回程度の訪問を続けてくれたそうです。

「私に言えないこともあると思います。誰かが話を聞いてくれる場があったのは、ありがたかったです」

Aさんが入院が必要になった際には、ワーカーさんたちが実家の親御さんと連絡を取り、夏休み中にお子さん2人を実家に預ける段取りまでサポートしてくれました。通院時のタクシーへの付き添い、主治医との面談への同席なども行ってくれたといいます。

「お悔やみコーナー」の開設に向けて

パートナーが亡くなった後の手続きは多岐にわたります。死亡届、世帯主変更、保険証の切り替え、児童手当の届出、医療証の変更……。Aさんの場合、葬儀社が死亡届を出してくれ、会社の総務が健康保険の手続きを進めてくれたことで、だいぶ負担が軽減されたそうです。

こうした手続きが一箇所でわかる「おくやみコーナー」の設置が、今年度の予算で進む予定です。

Aさんから、同じ立場の方へ

最後に、Aさんが同じ経験をされた方に伝えたいこととして語ってくれた言葉です。

「とにかく、周りの大人に助けを求めてください。」

子ども家庭支援センターでも、学校でも、会社の同僚でも、入り口はどこでもいい。「今こういうことに困っています」と自分から言ってしまった方がいい。みんな何て声をかけたらいいかわからなくて、一歩引いて見ているだけのことも多いから。自分から言えば、「それなら手伝えるよ」と動いてくれる人がいます。

そして、お金の心配で安易な判断をしないでほしい。 行政の制度や支援を知らないまま、危険な誘いに乗ってしまうケースもあります。まずは行政に相談を。制度のこと、気持ちのこと、生活のこと、一緒に考えてくれます。


使える窓口・制度のまとめ

困りごと相談先
子育て・家庭の困りごと全般子ども家庭支援センター(にこにこひろば等にも総合相談窓口あり)
自身の心身の不調保健サービス課(保健師に相談可)
在宅介護・看取り地域包括支援センター(介護保険の申請等)
死亡後の届出・手続き区役所戸籍住民課今年度より「おくやみコーナー」開設
ひとり親家庭の支援子育て支援課(家事支援サービス、各種手当等)
グリーフケア(悲嘆のケア)保健サービス課・子ども家庭支援センター経由で案内あり

ひとりで抱え込まないでください。声を上げてくれれば、届く支援があります。


この記事は、ご本人の承諾を得たうえで、個人が特定されないよう配慮して作成しました。